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2021年上半期DXまとめ—あらゆる業界で始まるDX黎明期

公開日:2024/01/31 / 最終更新日: 2024/02/21

新型コロナウイルスの猛威に振り回された昨年から、今年はワクチン接種の加速やオリンピックの開催など、昨年とは異なる変化に富んだ2021年。そうした環境下で中長期的な視点でDXに乗り出す企業も増えています。

今回は今年上半期に発表されたニュースやプレスリリースを基に、2021年上半期における日本国内のDX動向を探ります。


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タイヤ製造の職人技を標準化するブリヂストン


出典:プレスリリース

ブリヂストンは2021年4月に航空機用および建設・鉱山車両用タイヤの「モノづくり領域」において、匠の技を伝えるシステムをノビテックと共同開発したと発表しました。

過酷な環境で使用する航空機用タイヤや建設・鉱山車両用タイヤは、メーカーの総合的かつ高度な技術力が結集した製品であり、作業ステップ数は一般的な乗用車用タイヤの15倍以上に及び、高度な熟練のスキルが要求されます。こうした高度な技術を要求する製品製造の技術伝承は、ブリヂストンに限らず製造業全体において喫緊の課題です。

ブリヂストンは高速度現象の可視化・計測技術に強みを持つノビテックと共同で、匠の技術のデジタル化に着手。タイヤの製品品質に直結する成型作業の動きをモーションカメラや慣性・圧力センサーで計測。熟練技能員と新人の差を作業ステップ毎に可視化し評価、低評価のステップについて繰り返し訓練することで効率的に技能を習得できる技術伝承システムを完成させました。

DXにおいては自社に無い技術を持つ企業との技術連携——いわゆるオープンイノベーションが重要な鍵を握ります。オープンイノベーションの落とし穴として、よく言われているのは、同業界のベンチャーやスタートアップと大企業が提携しても、大企業側内部から「自分たちでもできる技術なのに、どうして外部と組むのか」という反対意見が起き、協業が進まないケースや知財を巡るトラブルに発展するケースも起きがちです。

自分たちの専門分野ではない領域の企業と組むことによって、ゴールまでのリードタイムと投資額を圧縮し、より精度の高いパフォーマンスで事業に貢献する協業モデルを組む「全体図のデザイン能力」はDX人材にとって重要なスキルです。

11億人の利用者、500万人の生活者のDXをスタートアップ組織で目指す東急


東急は2021年7月に街づくりにおけるDX加速を目的に新組織「デジタルプラットフォーム準備プロジェクト」(Urban Hacks)を設立しました。
2021年度中の組織化と開発への着手を目指し、CTO候補やPdM、エンジニア、デザイナーの採用を進めています。

東急は採用サイト上の募集要項において、大規模な都市データを活用したエンジニアリングや、大企業のスケールや安定性とスタートアップの機動力や挑戦力、徹底した内製開発思考を仕事の魅力としてアピールしています。

大企業におけるDXにおいてはスピード感の欠如がしばしば課題として指摘されていました。特に90年代以降の日本企業ではシステム開発はITベンダーやSIerに丸投げすることを選択した企業も多く、結果として時流に沿った迅速な対応が難しい組織構造が出来上がってしまったことが、DX推進を妨げている一因にもなっています。(参考記事:今こそ見直したい多重下請け構造—DXで内製化シフトは実現するか )

こうした状況を打開すべく、近年ではデジタル化部門を子会社化することで、異なる意思決定プロセスや給与体系や人事評価制度が施行できるようにしている企業も増えています。トヨタのウーブン・プラネット・ホールディングスは最たる例ですが、その他にも資生堂や住友化学、JTB、カインズなど各業界のトップ企業がデジタル部門の子会社を立ち上げています。

レガシーな文化や慣習が根強いイメージのある大企業ですが、一方では巨大なデータや資産、そして投資に対するインパクトの大きさは代えがたい魅力でもあります。
以前から日本はスタートアップが生まれにくい土壌であると指摘されていましたが、大企業内スタートアップはスケールの大きさとスピード感が両立した新たな取組として注目を集めるでしょう。

建機、物流、証券—スタートアップが牽引するDX


これまでは大企業側の視点で紹介しましたが、さまざまな業界でスタートアップ企業もDX化をリードしています。

建設機械の自動運転・遠隔操作技術を開発するARAV(アラブ)は建機メーカーや建設会社との共同による実証実験を通じて、クローラーダンプや油圧ショベルの遠隔操作に成功。2020年11月に国土交通省から「建設現場の生産性を向上する革新的技術」として選定されるなど、業界内で注目を集めている企業です。

2021年6月には既存の建機に後付で導入でき、スマホから操作可能な遠隔操作システムを発表。日本国内の労働災害による死亡者数の3分の1を占める建設業において、安全かつ合理的に作業が行える環境の実現を目指しています。

遠隔操作がさまざまな現場で実用化されると、作業員の安全もさることながら働く場所を限定しない人員確保も可能になります。自動運転技術やAIによる作業も将来的には実現されるでしょうが、安全性を重視する業界においては現場のオペレーター操作とAIの中間地点にある遠隔操作技術の実用化がDXへの現実的な第一歩といえるでしょう。

既に物流倉庫や工場の構内ではAGV(無人搬送車)や人間と作業を分担する協働ロボットの導入が進められていますが、今後は建設現場のように、運用環境を問わないシーンでの実用化が要求されるようになることが見込まれます。

産業分野におけるDXはハードウェア開発だけではなく、ソフトウェアやサービスにも及びます。

特にプラットフォームは、さまざまなソリューションを汎用化したものという観点で、低コスト化しやすく、あらかじめユーザー側がカスタマイズすることを前提にした設計になっている点など利用側のメリットが大きいことが特徴です。

この分野で近年注目を集めているスタートアップがTeleecistence(テレイグジスタンス)です。
同社は2021年6月に約22億円の資金調達を発表。創業以来の累計資金調達は45億円を超えます。また、同社は国内最大級の物流業者をパートナーとし、物流分野向けに開発した遠隔操作ロボットのトライアル導入の準備と製品試作を進めていることも明かしました。同社は2020年にローソンやファミリーマートなどのコンビニ大手と提携し、一部店舗の飲料売場のバックヤードからペットボトル飲料を自動で補充するロボットの試用運転を開始しています。今後、協働ロボットが活躍するシーンが増えれば、一つの現場に必要な労働者の数も削減され、少子高齢化社会でも経済成長を維持できる環境を実現できるかもしれません。

こうした優れた技術を持つスタートアップ技術の導入においては、現場とテクノロジーの橋渡しとなる人材が欠かせません。スタートアップが持つ技術の大半は、そのまま実用化できるものではなく、実社会の需要や要件とすり合わせることが必要です。

業界の需要や現場のみが知る事情などを吸い上げながら、スタートアップの技術を製品に転換するDX人材の需要は多くの業界で高まっています。

一方でソフトウェアやインターネットサービスなど、現場を必要としないフィールドではスタートアップが既存の大手企業と同じフィールドで参入する動きが活発です。

証券分野ではFintech分野のスタートアップであるAlpacaJapanが、2021年夏に証券サービス「アルパカ証券」を開始することを発表しました。

AlpacaJapanは以前にもインタビュー記事で紹介していますが、( 参考記事:経営者から見たDX人材最前線(1)−Alpaca Japan四元CEOが明かす「強い組織」の作り方 )金融商品に特化したAI開発で、これまでに東京海上日動や三菱UFJ銀行など大企業との実績もあるスタートアップです。既存プレイヤーにDXツールを提供するベンダーでありながら、自らプレイヤーとして市場に参加する事業モデルは、テック企業において珍しくないものになるかもしれません。

AI開発においては、解析結果の精度と顧客からの評価が事業存続から見ても重要です。この2つを自社で運用できる事業モデルは、自分たちが手掛けたプログラムが与えるインパクトがわかりやすいという面で技術者にとっても非常に魅力的なものに映るでしょう。

一方で既存の金融業界の企業はこうしたスタートアップと優秀な人材を取り合う構図は鮮明なものになり、魅力的な環境と評価されなければ同業界のスタートアップや、これからDXを進める後続の業界へ人材が流出する可能性もあります。

先に述べたようにDXに取り組む大企業の中には子会社を立ち上げて、スタートアップと近い環境を作るケースも増えています。DXやデジタル化の重要性を理解しながらも、具体的な一歩を踏み出せない実際のユースケースを自社に当てはめながら、自分たちならどんなDXの進め方ができるのか考えてみるのもいいでしょう。同業界で既にDXに関する具体的な事例がある場合には、インスピレーションを得る絶好の機会と捉えるべきです。

この記事の筆者

株式会社JAC Recruitment 編集部

株式会社JAC Recruitment

 編集部 


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