【イベントレポート】マルチプラットフォームやクラウドネイティブ時代を生き抜くエンジニアのキャリアとは

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あらゆるビジネスが変化の早い社会ニーズへの迅速な対応を要求される昨今、インフラを支えるITのあり方もまた、急速に変化しています。

 

DXの源泉となるデータは、あらゆる場所から膨大な量が集まるようになりました。

そうした環境下でITインフラが社会に与えるインパクトは更に大きくなっています。

クラウド前提のマルチプラットフォームがより加速する今後において、エンジニアは、どのようにキャリアをデザインしていくのがよいのでしょうか。

 

「オンプレミス」主流の時代からITインフラ技術の最先端をリードしてきた、ヴイエムウェア株式会社 最高技術責任者北アジア担当の進藤資訓氏と、元日本マイクロソフト 業務執行役員でITテクノロジーとキャリアデザインについてのオピニオンリーダーとして活躍する、JAC Digitalアドバイザーの澤円氏が対談したオンラインイベントの様子をレポートします。

 

※本記事は2021年9月にJACデジタルが開催したオンラインイベントを一部抜粋・再構成したものです。

 

 

 

目次

 

 

講師

 

ヴイエムウェア株式会社 最高技術責任者北アジア担当
進藤 資訓氏

1988年東京電力に入社。1992年よりカーネギーメロン大学コンピュータ科学学科へ留学。
その後、アセンド、コサイン、プロキシム等のネットワークベンダーを経て、2004年にファイブ・フロントを設立しCTOに就任。2011年よりニシラ(現ヴイエムウェア)に入社しネットワーク仮想化に従事。2016年 ヴィプテラ(現シスコシステムズ)に入社し、SD-WAN市場の開拓にあたる。2018年に再びヴイエムウェアに戻り、最高技術責任者北アジア担当に就任。講演・執筆多数。

 

株式会社圓窓
澤 円氏

株式会社圓窓 代表取締役。元日本マイクロソフト業務執行役員。
現在は、数多くの企業の顧問やアドバイザーを兼任し、テクノロジー啓蒙や人材育成に注力している。
2021年4月より株式会社JAC Recruitment デジタル領域アドバイザーに就任。

 

 

1.「神か」とコンサルタントが絶賛したVMware

澤氏:1997年にマイクロソフト(現日本マイクロソフト)に入社し、ITコンサルタントとして働いていた頃、大変だったのはシステムを検証するためのセットアップ作業でした。

 

並列で稼働するシステムであれば10台、20台とPCをセットアップしなければならず、それこそ当時はフロッピーディスクやCD-ROMでひたすらインストールする作業をしていました。

 

それから間もなくしてITシステム環境を仮想環境で構築するVMwareが登場し、CD-ROMをいちいち調達してインストールしなくてもセットアップできると知り、「なんてことだ、神か!」と感動したのを今でも覚えています。

 

進藤氏:VMwareはx86というCPUの仮想化ソフトウェアからスタートした会社です。

 

その当時、x86は仮想化できるようなアーキテクチャにはなっていなかったので、多くの人は仮想化できないだろうと思っていましたし、実現したとしても実用に足る速度では動かないと思っていました。そこにVMwareを創業した5人のエンジニアが実用性のある速度で仮想化させ、世の中を驚かせたのです。

その後はネットワークやストレージの仮想化にも幅を広げ、データセンターのモダナイゼーションを推進してきました。

 

 

 

2.ITがもたらしたものは、サイロの抽象化と情報の民主化

−−お2人から見て、ここ近年の時代の変化をどのように見ていますか?

 

 

進藤氏:歴史的な視点で見ると技術は常にサイロ(※)と共に動いています。コンピューター、ネットワーク、ストレージ、それぞれにできたサイロを仮想化技術で抽象化することで、システムの上流から下流に至るまで、何も気にせずに利用できるようにするというトレンドが必然的に起きていました。

 

そういった流れの中で現在はクラウドもサイロ化に陥っている状況が今のITインフラの大きな問題です。このクラウドのサイロ化を解き放つことが、VMwareが取り組む最も大切なテーマの一つになっています。

 

※サイロ…元々は飼料や化学原料を貯蔵する巨大なタンクを並べた貯蔵庫を指すが、IT業界では組織内のITシステムなどが、外部との連携をせず孤立している様を示す言葉として使われている。

 

澤氏:私は情報共有系のことに携わっていましたが、その観点では民主化が進んだ印象を持っています。

 

インターネット黎明期における情報共有の主役はメールでしたが、非同期な1対1のやり取りになってしまい、CCに人を入れすぎると意味不明なメッシュができ、コミュニティを作るという点ではメールは向いていませんでした。

 

そこにグループウェアがエンタープライズ市場に登場し、社内で情報共有をしましょうという価値観が浸透し、さらにSNSが登場したことで社内と社外の垣根を超えたコミュニティが生まれるようになりました。こうして多くの人たちのリテラシーの底上げが行われ、コンピューターをまったく知らない人でもスマホを使う世の中になっている。結果的にテクノロジーが民主化され、コミュニティ中心の社会が形成されてきたと感じています。

 

進藤氏:民主化というのは選択の自由があるということですよね。

 

仮想化以前のITインフラは垂直統合でハードウェアからソフトウェアに至るまで使えるものが決まっていて垂直統合したような仕組みになっていました。そこに仮想化技術が機能分割などを通じて、ユーザーが自由にツールを使えるようにしました。

 

インフラで起きた民主化も、澤さんがおっしゃったアプリケーションで起きた民主化も、根っこにあるものは同じだと思います。

 

今後に視野を向けると、データが主役になるだろうと予想しています。エッジやIoTなどを介して、日々さまざまなデータが大量に生成されています。

 

しかし、「データには重力がある」という言葉が示すように、大量のデータをクラウドなどに集約するとデータ量が膨大になり、処理が重くなります。それはシステム的にも経済的にも合理性に欠けるので、データが生まれた端末の中で処理するエッジコンピューティングの重要性が声高に叫ばれているわけです。

 

 

 

3.データ中心の社会におけるエンジニア

澤氏:進藤さんがおっしゃったように、今後はデータがポイントになると思います。

 

かつてはデータもサイロ化して処理にも手間がかかりましたが、現在ではInstagramで誰かが撮ったセルフィーに何も手を加えなくてもマーケティングデータとして使える状態になっています。

そういった状態でデータがどのように活用されるか、悪用されるか、結合して新しい価値を生むのか、あらゆる観点から考えられるようになると最強の人材になれるでしょう。

とはいえ、ありとあらゆる観点で実行できるのはごく一部の人だけなので、自分の得意分野や強みがある領域から行動することが求められると考えています。

 

たとえば、「製造業におけるエラー情報を処理して、マーケティングデータとして使えるには?」という発想を持って、エンジニア同士だけでなく、いろいろな職能を持つ人や企業とコラボレーションできる人材が価値を発揮する時代になるでしょう。そのためにも自分がコントロールできる部分にフォーカスして、能力を磨いていくとよいと思います。

 

 

−−進藤さんはこれまでのキャリアの中で大切にされてきたことはありますか?

 

 

進藤氏:社会人になってから、IPO1回、買収3回、起業1回という大きなイベントがありましたが、技術に対する洞察力が自分にあったとは思っていません。

それよりも大切だったのは人だったのだと思います。今いる会社で素晴らしい仕事をすることで同僚との信頼関係が生まれ、その同僚たちが世界中に散らばって新しい仕事でも素晴らしい結果を残せば、互いに「また一緒にやらないか」と声がかかる。こんな形で私は転職して、その先でIPOや買収を経験できたわけです。

 

決して、技術をあらかじめ見極めていたわけではなく、人とのつながりを大切にしてきたわけで、そのつながりを生み出すためには素晴らしい仕事をするというのが、単純ですが重要なことだと思います。

 

澤氏:進藤さんに同感です。「やっぱり人なんだよ」というと、ありきたりなことを言っているなと受け取る人もいますが、あらゆることにおける唯一の結論だと思います。

 

なぜなら人は変わりたいと思ったときに、他の人からの働きかけによって変わる、もしくは人が生み出したものによって変わるんです。何かキーワードがポンとあって、自然発生的に変わることはないよう思います。

 

誰かの行いや作り出したものに感動するというストーリーが人を変え、そのストーリーの中には必ず人が存在します。だから、自分のロールモデルや憧れる人が周りにいるかというのが、今後のキャリア形成では重要かと思います。

 

 

 

4.スキルを身につけるか、センスを磨くか

−−キャリアアップにおいて、多くの人がスキルを身につけることを志向する一方で、お2人の話からそうしたマインドセットを変えていく必要があると感じました。ただ、自分のマインドセットを変えることは簡単ではないと思いますが、その一歩を踏み出すためにはどうしたらいいでしょうか。

 

 

澤氏:スキルとセンスの関係を、例を挙げながら説明しますね。

私は、スキルとは10万円のシャツを買うことだと思います。少し勇気の要る値段だけど、お店で買える。「わっ!高いな」という懐具合の人は分割払いにするとか買い方を考える必要があるけど、その気になれば誰でも手に入りますよね。コストがかかるかもしれないし、重い負担になるかもしれないけど、何らかの形で身につくのがスキルというものです。

 

しかし、それはセンスも同様かというとそうではありません。

センスとは今ある服と組み合わせたり髪型を変えたりと、複数の要素を組み合わせないといけません。それこそがセンスであり、人によって表現方法も変わります。持っている服も違うし、似合う髪型も違う。そう考えると、自分のセンスに10万円のシャツ(スキル)を、どのように合わせていくかが重要になります。

 

今ある服をうまく組み合わせるにはどうしたらいいかというと、全身を映す大きな鏡が必要なのです。全身を映してみないことには、シャツとほかの服とのバランスを見ることはできませんからね。

 

スキルを手に入れても、すぐにレッドオーシャンになりやすい一方で、センスは自分の手元にあるものの組み合わせで可能性を広げることができます。ただ、それを知るためには鏡が必要だし、失敗しながらも組み合わせを試してみることも必要です。いずれにしても試した結果をチェックすることが大切なのですが、キャリアにおける鏡は何かというとメンターなんですね。

 

今、自分がどういう状態かフィードバックをくれる人がキャリア形成においても重要で、社内ではなく、社外など距離感のある場所からフィードバックを与えてくれる人やコミュニティに属することが重要だと思います。

 

 

−−進藤さんは澤さんがおっしゃったセンスをどのように捉えていますか?

 

 

進藤氏:私にセンスがあるかわかりませんが、常に心がけている両極端のことがあります。

 

1つは物事を極めることの重要性です。ある技術に興味を持ち必死で取り組んだら、どんな技術でも1年で日本のトップになれるでしょうし、3年継続したら世界に進出できると思います。その技術がレッドオーシャンでなければ、それぐらいの期間で頭角は表せるでしょう。

 

VMwareは幅広い分野において、エンジニアが取り組みたくなるような種がたくさん撒かれている会社でもあります。

一方で技術だけにフォーカスせずに広い視野を持つことも重要です。技術から一歩引いて、いろいろなことに関心を持つこともセンスを磨く上では欠かせません。

私は毎週TED Talksを見るようにしているのですが、最近おもしろいと思ったのはディープラーニングを使ってマッコウクジラ同士の会話内容がかわるようになってきたそうなのです。

 

データが蓄積され、ディープラーニングも発展すると、いつかマッコウクジラに話しかけることができるかもしれないという点に興味をいだきました。

仕事だけでなく、いろいろなことに関心を持つことで、それが再び自分の仕事に新しい観点や切り口を持たせるきっかけになると思います。

 

 

 

5.マネジメントとエンジニアは対立関係ではない

−−技術を極めるのも重要ですが、そこに関係しないことにも視野を広げたのちに、客観的な視点をもって自分のキャリアを見直すことが重要なのですね。
1つの道を極めるスペシャリスト以外にもマネジメントへのキャリアを考える人もいます。両者には異なる部分もあると思いますが、マネジメントを目指す人に対して、お2人から伝えたいことはありますか?

 

 

澤氏:マネジメントとエンジニアのキャリアを対立軸で考える人がある程度います。

 

マネジメントに入ってしまったら、エッジの立った状態でエンジニアとして働けないと不安視する人が多いのですが、その心配はありません。なぜなら、マネジメントを知るほうが、エンジニアのキャリアとしては圧倒的に有利だからです。エンジニアとして今は一流であっても、その時点で身に着けている技術だけで一流であり続けることは不可能です。

 

しかし、「マネジメント」というタグを得ると、キャリアを考える上で強力な武器になります。

マネジメントを知ると視点の高い人との会話する機会も生まれ、何のためのエンジニアリングやテクノロジーなのかという視点が身につくので、あるフェーズにおいてエンジニアとしての正しい選択や、優秀なエンジニアの採用をすることができるようになります。マネジメントとしての視点を得るチャンスが有れば、絶対に身につけておいたほうがいいですね。

 

進藤氏:よくIC(管理責任を負わない専門職の従業員)とマネジメントの道があるといわれますが、昇進をするためにマネージャーになるのが必要条件だからマネジメントのパスを選択するということは間違いです。

 

マネージャーは独自のスキルが必要で、ICと違う要求をされることもあります。エンジニアでありながらもマネージャーであり続けるというのは、非常に大変なことです。そうしたことからマネージャーのほうが待遇面はいいわけですが、昇給・昇進の選択肢がマネージャーしか無いのであれば、その職場に留まらないほうがいいでしょう。

マネージャーには人の成長を喜べる素質が無ければ向いていません。技術が好きで、人の成長に関心が無ければICの道を進むのが、本人にとっても幸せですね。

 

澤氏:マイクロソフト時代の同僚にマネージャーからICに戻った人もいました。

彼らいわく「マネージャーは十分経験したので、次はマネージャーの視点を持ってICとして貢献したい」という理由で、キャリアを転換したのです。こうした事は日本企業では降格と見られることがありますが、役割を変えただけなので降格とは全く違うものです。マネージャーとは役割であってICよりも偉いわけではないのです。

学校で例えるなら、学級委員長と同じで役割を担っているだけで、生徒であることにかわりはないので、そういった観点でマネージャーを捉えたほうが良いですね。

 

進藤氏:VMwareはマネジメントに進む道もあれば、ICであり続けるキャリアパスも用意されていますが、エンジニアには自分にとってベストなキャリアを選んで欲しいと思います。

 

 

 

6.マネージャーは自己開示した方がよい

−−マネジメントをする上でお2人が意識されてきたことはありますか?

 

 

澤氏:自己開示をすることですね。弱みを見せて、できないことをカミングアウトして助けてほしいと伝えることは、これから先のマネジメントで更に求められると思います。

 

引っ張ってくれるタイプがいいというリーダー像もありますが、遅かれ早かれできないことはバレますから、早めに自己開示しておいたほうが良いですね。

 

「私はここが得意だけど、ここが苦手だから助けてほしい。その代わり、私はあなたのここを応援する」といったやりとりをできるマネジメントは組織運営面でも重要ですし、キャリアを作る上でも大切なポイントになるでしょう。

 

進藤氏:マネージャーは常に対話が必要なので、コミュニケーション能力が求められますよね。

 

私が信条としていることの一つが「謙虚(humble)である」ということです。人間は見栄を張る生き物なので、わからないことをわからないと言えなかったり、知らないことを知らないと言えない。

 

でも、いろいろな経験を積み重ねて、ある部分では自信が持てるようになると、「わからないものはわからない」と言えるようになると思うんですね。

 

自分に揺るぎない礎(いしずえ)がないと守りに入ってしまうので、ついわかったふりをしてしまう。謙虚であるためには揺るぎないものを持つことも必要だと思います。

 

 

 

7.会社をうまく使って成長できるエンジニアになろう

−−マネジメントやICなど、さまざまなキャリアパスがある中で進藤さんからエンジニアの皆さんに最後に一言お願いします。

 

 

進藤氏:さまざまなことに幅広く関心を持ち、チャレンジすることが大切です。

 

幸いなことにVMwareは従業員が3万人を超える企業になり、多くのお客様にも恵まれたことで、イノベーションが製品となって、売上という対価になり、再びイノベーションに投資するというサイクルが成立している数少ないテクノロジー企業へと成長しました。

 

VMwareの中には将来の芽になる要素がたくさん転がっていますし、それを発掘する器の広さもあります。

エンジニアの皆さんには、企業が強みとしているものを自分自身の道具として使うという意識を持ってほしいのと同時に、会社の仕組をうまく活用して、みなさんがやりたいことを実現してほしいと思います。

 

 

 

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