【イベントレポート】AWS×Salesforce世界のITを革新するクラウドカンパニーにおけるITセールスの未来とは

Pocket

ニューノーマル・VUCA時代を迎えた今、IT業界でも多種多様なビジネスの創出が加速しています。同時にその最前線で活動する営業の仕事もモノ売りではなく、新たな世界観やこれまでにないビジネスを創造する仕事へと変わってきています。この先の時代に求められる営業職の本質、あり方とは、そしてデジタルの先端を行く企業が掲げる社員像と顧客を尊重する文化とは――。

 

こうしたテーマについて、アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 本部長 鈴木圭介氏、株式会社セールスフォース・ジャパン 執行役員副本部長 田中淳也氏、そして元日本マイクロソフト業務執行役員でJAC Digitalアドバイザーの澤円氏らがトークイベント形式でお話します。

 

 

※本記事は2022年4月20日にJACデジタルが開催したオンラインイベントを一部抜粋・再構成したものです。

 

目次

 

<講師紹介>

 

アマゾンウェブサービスジャパン合同会社
エンタープライズ事業統括本部 流通・小売・消費財営業本部 本部長

鈴木 圭介氏

ニューヨーク州立大学モリスビル校卒業後外資系IT企業の営業として数社を渡り歩き、東京リージョンが開設された2011年に4人目の営業としてアマゾンウェブサービスジャパンに入社。
約3年現場の営業として活躍し、その後営業マネージャー職へ移り8年目。7年に渡りインターネットメディア、トラディショナルメディア、アドテクノロジー企業、ゲーム企業を担当し、その後現職である流通・小売・消費財企業を担当。営業マネージャーの傍らでアマゾンBar Raiser(採用基準を上げる役割)という社内資格を持ち、約650回に渡る採用面接に携わり、自部門以外の人材採用にも大きく貢献している。加えて「アマゾンのイノベーションを支えるカルチャー」の認定スピーカーとして各企業のエグゼクティブ向けにセッションを開催し、企業のカルチャー変革の啓蒙活動に注力している。

 

※鈴木 圭介氏は、2022年5月をもちまして
アマゾンウェブサービスジャパン合同会社をご退職されました。(2022年6月10日調べ)

 

 

株式会社セールスフォース・ジャパン
執行役員
エンタープライズ営業第二本部副本部長 兼 第五営業部長

田中 淳也氏

SIerやERPベンダーを経て、2012年にSalesforceへ入社。
入社後は営業担当として6年間、営業マネジメントとして3年間。
Mid marketにてアマダ/LIFULL/オイシックスなどBtoB、BtoC問わずさまざまな先進プロジェクトを担当。2019年に営業部長
2022年に執行役員。
2018年 Japan No,1 Salesや日本法人 最多の年間達成ノウハウをSNSで発信。

 

 

株式会社圓窓
澤 円氏

元日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。立教大学経済学部卒。生命保険の IT 子会社勤務を経て、1997 年、日本マイクロソフト株式会社へ。IT コンサルタントやプリセールスエンジニアとしてキャリアを積んだのち、2006 年にマネジメントに職掌転換。幅広いテクノロジー領域の啓蒙活動を行うのと並行して、サイバー犯罪対応チームの日本サテライト責任者 を兼任。2020 年 8 月末に退社。2019 年 10 月 10 日より、(株)圓窓 代表取締役就任。
現在は、数多くの企業の顧問やアドバイザを兼任し、テクノロジー啓蒙や人材育成に注力している。美容業界やファッション業界の第一人者たちとのコラボも、 業界を越え
て積極的に行っている。テレビ・ラジオ等の出演多数。Voicy パーソナリティ。武蔵野大学専任教員。

 

 

1.顧客体験を最優先するAWSのビジネスモデル

 

 

鈴木氏:アマゾンウェブサービスジャパン(以下AWSジャパン)の鈴木と申します。東京リージョンができた2011年に、4人目の営業として入社しました。今はエンタープライズ向けの営業部門でマネージャーを務めています。

 

Amazonは「地球上でお客様を最も大切にする企業であること」を全体のミッションに掲げ、意思決定の際にも本気でお客様のためになることを常に意識している企業です。創業者のジェフ・ベゾスが紙ナプキンに記したとされるビジネスモデルの図でも、顧客体験を高め、お客様への責務を果たすことがビジネスの成長につながる様子が描かれています。顧客体験の具体的な中身は「品揃え」と「低価格」、現在ではさらに商品のレーティングやコメント機能のような「コンビニエンス(利便性)」が加わっています。

 

AWS(アマゾン ウェブ サービス)はAmazonが成長する過程で、ビジネス部門の新しい発想にITを追従させるためにスタートしました。現在、AWSのサービスは世界190カ国以上で数百万、日本では数十万以上のお客様にご利用いただいています。これまで累計で111回の値下げを行い、お客様に還元してスケールメリットを得られるようにビジネスを行ってきました。昨年はサービスのリリースと機能拡張を合わせて3884件行いましたが、このうち90%程度はお客様からのフィードバックをいただいて実施したものです。

 

AWSジャパンの大きな強みとして、パートナーコミュニティの存在があります。JAWS(AWS Users Group – Japan)やエンタープライズ会員だけのE-JAWSのようなコミュニティが全国にあり、率先してAWSを活用いただいたり、ベストプラクティスを共有いただいたりと、コミュニティの皆さんと一緒に歩んできました。

 

 

2.CRMを中心にポートフォリオを広げるSalesforce

 
 

田中氏:セールスフォース・ジャパンの田中です。新卒で入ったSIerで2年、基幹業務システムベンダーで4年勤めた後、2012年に社員数が400名程度のタイミングで入社しました。6年ほど営業を担当し、今はマネジメントとして4年目となります。従業員規模として中堅から大手に準ずるお客様を担当するチームで、製造業のアマダさんや不動産ポータルのLIFULLさんなど、BtoB、BtoCを問わずさまざまなプロジェクトの提案や支援をさせていただきました。

 

Salesforceは営業管理や案件管理というイメージが強いと思いますが、売上に占める割合は実は半分にも満たないです。残りはマーケティングオートメーションやECサイト制作ツール、データ分析ツールや2020年12月に買収したSlackなど、幅広いポートフォリオで構成されています。基幹業務システムやIaaSといったレイヤーではなく、CRM(※)を中心として、カスタマーエクスペリエンスの向上や製品の拡充に取り組んでいます。

 

これまでは1社ごとにCRMをカスタマイズして設定いただいていましたが、最近ではわれわれのノウハウをパッケージ化して、特定の業種業態に特化したテンプレートを作って提供しています。そのため社内では、IT系のバックボーンを持つ人間だけでなく、たとえば金融系や製造業など異業種を経験し、業種のノウハウを持ったメンバーなども活躍しています。

 

澤氏:「AWSであればIaaS屋さん」「SalesforceであればCRM屋さん」というような第一印象が入ってしまうと、なかなかそこから出られないと思いますが、実際にはかなりいろいろなことをやっていますよね。

 


※CRM…Customer Relationship Management(顧客関係管理)。顧客との関係性やコミュニケーションを管理し、自社の従業員と顧客との関係を一元的に把握する仕組み。

※IaaS…Infrastructure as a Service(サービスとしてのインフラ)。システムの基幹部分のみをインターネット経由で利用できるサービス


 

3.機械のIoT化で稼働を管理――現場に根付くビジネス

澤氏:最近ホットトピックになっているビジネスニーズがあれば、ご紹介いただけますでしょうか。

 

田中氏:金属加工機材メーカーであるアマダ では、営業の案件管理だけでなく、IoTの活用にもご利用いただいています。マシンにセンサーをつけて加工記録や振動、熱などのデータを集め、たとえば壊れる予兆を検知して予防保守するような使い方です。

 

アマダの機械はトヨタから小さな町工場まで、世界中の10万社くらいで使われています。そうしたユーザー向けにパーソナライズしたポータルサイトでは、購入した機械のリストや、マシンの稼働状況をチェックできます。広いエリアを管理しているユーザーの場合、稼働率が数%上下するだけでも大きく利益が変わりますから、夜間の稼働管理や、加工後の写真シェアによる品質チェックなどに活用いただいています。

 

リピート購入いただく消耗品などについては、営業マンが動かずとも、そのままECサイトで購入いただけるシステムも組み込まれています。こうした現場のニーズに基づく具体的な提案をしているので、単純な案件管理や顧客管理のような世界ではなくなってきています。

 

澤氏:裏を返すと、ちょっと厳しい言い方をすれば、ソフトウェア的な知識だけではもう、ある意味仕事にならないということも言えますよね。あるいは、そうした現場での経験が生かせるとも言い換えられます。

 

田中氏:そうですね。Salesforceの営業マンが訪問する先はシステム部門ではなく、メインは経営部門や営業部門などのビジネス部門です。そのようなお客様に対してビジネスの話ができる方は、とても活躍できると思います。

 

 

4.エグゼクティブが知りたがる、Amazonのイノベーション作法

澤氏:ではバトンタッチで、鈴木さんお願いします。
 

鈴木氏:Amazonを構成するメカニズムのなかでも、需要予測は非常に大切なものです。そのノウハウを切り出したAmazon Forecastを使えば、どのお客様がどのタイミングでどんなものを購入するかという需要を予測できます。島村楽器はAmazon Forecastの導入によって5,000アイテムの月次予測を算出したことで、そのうち2,100アイテム程度の自動発注を実現し、人の手による発注作業を50%削減できたとうかがっています。

 

他方、AWSを IaaSや PaaS のようなパーツとして捉え、サービス実現のために具体的な相談をいただくのではなく、企画の立ち上げからお声がけいただくことも増えています。AWSのイノベーション支援プログラム(デジタルイノベーションプログラム、略称DIP)は、Amazonがサービスを作るときの顧客起点の考え方をメカニズムに落とし込み、そのフレームワークを用いてお客様と進めていくものです。

 

特に私たちがほかのクラウド事業者と異なる点は、Amazon自身がクラウドをうまく使ってイノベーションを起こし続けていることです。そこが現実味のあるメッセージとして伝わるようで、特に経営者の方々から「なぜAmazonはイノベーションを継続的に起こせるのか?」とご相談いただくことが増えてきました。「組織・アーキテクチャ・メカニズム・企業文化の4つが揃わないとイノベーションは起こせない」というAmazonのイノベーションの方程式に基づいて、そのためのカルチャー変革などについてお話しさせていただいています。

 

 

5.「Our Leadership Principles」と「Trailblazer」

澤氏:鈴木さんの目から見て、AWSジャパンのカルチャーをひと言で言うと何でしょうか?

 

鈴木氏:Amazonには16項目からなる「Our Leadership Principles」という行動規範があり、これを完全に理解した上で、お客様に対する行動を決めています。入社時のインタビューや社員の評価も、この信条に基づいて行います。なかでも1番目に書かれた「Customer Obsession」、つまりお客様を起点に考えることが徹底され、カルチャーとして根付いていると思います。

 

われわれのチームでは、存在の礎となる信条(Tenets)として、たとえば「Pursing True Customer Obsession:私たちは一人の最終消費者としてお客様が目指す世界をともに考え、消費者の生活を楽しく豊かにします」といった内容も定めています。

 

流通や小売の方にサービスを提供した場合、一人の最終消費者であるわれわれも、結果的にその恩恵を得て豊かな生活を送れるという考え方です。もちろんAWSの売り上げも大切ですが、とにかくお客様を起点に考えていくのがわれわれのスタイルです。

 

澤氏:田中さんはいかがでしょう。

 

田中氏:10年前ぐらいに私が入社した当時は、いわゆる外資系ベンチャー企業というイメージでハードに働き、数字にも厳しい雰囲気もありました。一方で皆が切磋琢磨し、とても優秀な社員が多かったです。もちろん会社としての勢いもすごかったのですが。

ですが、それだけだとちょっと駄目だよねということで、お互いを助け合う風土を醸成して参りました。「Don‘t win alone, Don’t lose alone(1人で勝つな、1人で負けるな)」というチームワークの精神はもちろんのこと、昨今では弊社の社員、お客様、そしてパートナーのコミュニティを「Trailblazer」と呼び、特別なファミリーとして助け合いの文化を醸成しています。家族だからこそ厳しく接するけれども、そこで見放しはしない、互いに学習し、成長し、成功に向けて助け合うファミリーとして接しようというカルチャーは、いろいろなところに組み込まれています。

 

澤氏:なるほど。僕がいたマイクロソフトもそういうところがありました。すごく厳しいガチガチのイメージからずいぶん経営方針を変えたのは、そういうふうにしていかないと、やっぱり全ての人があまり幸せにならないからだと思います。全ての人たちというのは、たぶん社員だけじゃなくて、結果的には顧客やパートナーにも影響してくるかなという印象がありますよね。
 

 

6.ユーザーコミュニティと企業の密な関係

澤氏:AWSはコミュニティをとにかく大事にする印象があります。

 

鈴木氏:そうですね。会社が小さかったときから、コミュニティの皆さまにはすごく助けていただき、大切に思っています。たとえば東日本大震災の際には、日本赤十字社のサイトへのアクセスが想定以上に集中したことがありました。AWSジャパンとしてはサーバーを提供するくらいしかできなかったのですが、コミュニティの皆さんには各種サイトの増強や移行など、本当に動いていただいて。震災自体は決してよい話ではありませんが、災害時にクラウドが価値を持つことを実感できた機会でした。

 

AWSの考え方やモデルを非常に喜んでくださった方たちが、その想いを社員以上に熱く語り、いろいろなところで広げていただきました。そうしたコミュニティの草の根活動や皆さまの熱い想いを邪魔したくない、支援したいという思いと大きな感謝があり、今でも非常に密な関係を築いています。

 

澤氏:イベントやEXPOでAWSのコーナーに行くと、ユーザーさんやパートナーさんがブースを出していて、その全部がショーケースの見本市みたいになっていますよね。本当にカスタマーファースト、パートナーファーストでやっていることが伝わってきます。

 

田中氏:セールスフォース・ジャパンには「Salesforce活用自慢大会」というピッチコンテストのような大会があります。日本全国のビジネスユーザーがどのようにSalesforceを使って経営や営業を改革したか発表するイベントなのですが、大いに盛り上がります。

 

2018年にはサンフランシスコで、Dreamforceというイベントに参加しました。世界中から20万人程が集まるSalesforceの一番大きなイベントなのですが、創業者のマーク・ベニオフによるキーノートスピーチの最初に、とあるお客様が登壇していました。もともとITの知識のない女性だったのですが、生活資金を稼ぐためにSalesforceを学び、子育ての費用も稼げるようになったというカスタマーサクセスストーリーが語られました。

 

人生が変わったその方はその後、ユーザーが土曜日に集まって勉強するSalesforce Saturday というムーブメントを起こしました。今では日本でもユーザーによる勉強会が開かれ、Salesforce女子部というコミュニティも生まれています。

 

7.AWSとSalesforceにフィットするのはこんな人

澤氏:AWSもSalesforceも「カルチャーをシェアする場」とも言えるコミュニティに対して、けっこう似たアプローチを取られている感じがします。その中でも、こういうマインドであればうちの方が向いているかもしれない、というアピールポイントみたいなものはありますか?

 

鈴木氏:AWSジャパンの今のステージでは、先ほどお話ししたように、Amazonのカルチャーが経営者の方々に響いています。なので、そういった企業を対象に、エグゼクティブアプローチをしながら大きく物事を変えたいと思う方にとっては、すごくよいタイミングだと思います。

 

カルチャーについては、繰り返しになってしまいますが、本当に「Our Leadership Principles」を大切にしています。外部にも公開されているので、それを見ていただいて、考え方が合う人であれば間違いないと思います。

 

田中氏:Salesforceはプロダクトポートフォリオが広がっているので、1人で提案することはほとんどなく、提案の度に営業やSEを含む10〜20人ぐらいのチームを構成します。先にお伝えした「Don’t Win Alone, Don’t Lose Alone(一人で勝つな、一人で負けるな)」という言葉もあり、1人で何かをしたい、黙々と提案したいという方には向いていないと思います。

 

逆に、多くの人のネットワークでチームを作る、指揮者やコーディネーターのような特性がある方は活躍できると思います。ITの知識がある人もいれば、ビジネスサイドから来た人もいますが、活躍している人たちには、そうした社内外のつながりを持っていることや、チームを作る力が共通しています。

DX事例、最新トレンドの新着記事を
ソーシャルメディアで受け取ろう

→twitterアカウントをフォローする
WP Twitter Auto Publish Powered By : XYZScripts.com