メタバースで行う「キャリアの棚卸セミナー」

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終身雇用の時代は終わったといわれて久しい今、会社からの評価だけでなく、自分軸で今後のキャリアを考えていくことが大切です。生涯現役時代で、私たちはどのように中長期のキャリアを創っていけばよいのでしょうか。

 

JAC Digitalのアドバイザーであり、自身もITエンジニアから世界的外資IT企業の業務執行役員に就任し、現在は独立してキャリアに関するセミナーを数多くこなす澤円氏に登壇いただき、強いキャリアを創るために大切なマインドセットや、実際に「どうやって整理していくのか」などの澤氏の経験に基づいたキャリアの振り返り方をお伝えします。

 

 

※ 今回のイベントはメタバースの仮想空間で実施し、参加者はアバターとなって視聴しました。
※ 本記事は2022年5月26日にJACデジタルが開催したオンラインイベントを一部抜粋・再構成したものです。

 

 

 

目次

 

<講師紹介>

 

 

株式会社圓窓
澤 円氏

元日本マイクロソフト株式会社業務執行役員。立教大学経済学部卒。生命保険の IT 子会社勤務を経て、1997 年、日本マイクロソフト株式会社へ。IT コンサルタントやプリセールスエンジニアとしてキャリアを積んだのち、2006 年にマネジメントに職掌転換。幅広いテクノロジー領域の啓蒙活動を行うのと並行して、サイバー犯罪対応チームの日本サテライト責任者 を兼任。2020 年 8 月末に退社。2019 年 10 月 10 日より、(株)圓窓 代表取締役就任。
現在は、数多くの企業の顧問やアドバイザーを兼任し、テクノロジー啓蒙や人材育成に注力している。美容業界やファッション業界の第一人者たちとのコラボも、 業界を超えて積極的に行っている。テレビ・ラジオ等の出演多数。Voicy パーソナリティ。武蔵野大学専任教員。

 

 

1.コロナ禍でデジタルはインフラに。データを信じる生きものへの進化

 

 

2020年、世界は25年ぶりにリセットされました。COVID-19による世界の変化を、僕は1995年のインターネット登場以来の衝撃と呼んでいます。そして、いま皆さんが体験しているメタバース、あるいはWeb3の世界は、COVID-19とほぼ同時に盛り上がってきたといえます。ウイルスによって移動が制限され、物流も影響を受けました。しかし人類にはデータ通信という残された道があり、インターネットを通じて情報をやりとりすることで、どうにか仕事を続けることができました。デジタルというものは、電気や水道・ガスと同じような、人類のインフラになったと言っても過言ではありません。

 

家から出ずにショッピングできるECサイトの需要も高まりましたが、そこでは実際に買いものをしているといえるでしょうか。私たちは商品そのものではなく、あくまで画像とそれに付随している情報、つまりコンテンツを買っています。その結果として実物が届くことを経験として知っているので、クレジットカードの番号さえ登録してしまう。一方で、目の前にいるリアルな人に「信用してください」といわれても、カード番号を送るのには抵抗があるはずです。ECサイトに番号を登録できる理由は、人類は進化して「データを信用する生きもの」になったからです。

 

データが信用できなければ、ロケットを飛ばすこともできません。徹底的なシミュレーションに基づいたデータが信用できるからこそ、ロケットは宇宙に飛び出せるのです。また、もはや「データになっていない=この世に存在していない」とさえいえる世の中になっているかもしれません。新しいお店やレストランを見つけたら、入る前にとりあえず検索する方も多いですよね。目の前にあるのだから入ればわかるのに、失敗したくないという心理が働き、まずは調べる。裏を返せば、データとして書かれたものが信用できるからこそ、こういう行動をとるわけです。

 

 

2.メタバースの価値の捉え方と、既存技術を使い倒すイノベーション

 

 

デジタルがインフラとなって拡張された世の中では、あらゆる出来事にテクノロジーが付随します。大きな仕事をするために大きなマーケットを選ぶことは仕事の原理原則ですから、すべての企業や組織はテックカンパニー/テックオーガニゼーションになって拡張された世界でビジネスをする必要があります。新しい世界に対応することは重要ですが、バズワードに踊らされて本質に気づかないのであれば問題です。

 

今回のセミナーで利用しているメタバースもある種のバズワードですが、これをどう捉えていくか。「特定のベンダーが提供しているサービス」「ゲーミングやエンタメの機能を有するもの」「オンラインミーティングの一形式」など、捉え方はさまざまです。僕はここからもう一歩進めて、誰がどのようにハッピーになるサービスなのか、新しいテクノロジーなのかという文脈で考えてみました。

 

転職にまつわる情報を提供する場では、同僚に鉢合わせしたくないなどの理由で、リアルな顔を出すことに抵抗がある方も多いはずです。ある程度匿名性が担保された状態で、個人向けにカスタマイズされた情報が欲しいというシチュエーションには、メタバース空間が最適だと思えました。今日のイベントのため、人材紹介事業を展開するJACリクルートメントとメタバース空間を手がけるm-Labを僕が仲立ちしたのは、それで求職者の人たちがハッピーになると考えたからです。

 

今回は、両方の会社でアドバイザーを務める僕という人間がハブとなって二つの会社をつなぎましたが、これは一つのイノベーションです。「新結合」を意味するイノベーションにおいて、新しいテクノロジーを生み出すことにこだわる必要はありません。たとえばUber Eatsは街の飲食店と個人のスマートフォン、自転車やバイクをアプリによって繋げたものです。個々の要素はすべて昔からあったものですし、新しく作ったアプリでさえ、地図情報や認証システムなどの要素技術は昔から揃っていました。今あるテクノロジーを使い倒しながら、要素を組み合わせていくことで、素晴らしいソリューションが生み出されています。

 

3.素人でも最先端を味わい尽くせば先行できる

 

 

僕は1993年にIT業界に入った当時、文系出身でコンピュータに関する技術も知識もなく全然使いものになりませんでしたが、そこにインターネット時代がやってきました。インターネット通信という技術に詳しい人はいても、インターネット時代を知っている人は誰もいないので、全員が初心者に戻ったと言えます。そのとき僕はパソコンを自分で買って、とにかくインターネット時代を最初から味わい尽くすつもりで、毎日毎日ネットサーフィンしていました。技術なんて何もありませんが、とりあえず必死でやりました。

 

その結果何が起きたかというと、「まあまあインターネットに詳しいやつ」というポジションを取れました。IT業界の中では相変わらずドベですが、ITを使う人の総数がインターネットをきっかけに爆発的に増えたので、相対的に僕の立場が上がりました。自分のために一生懸命説明していたことを他人に共有したら感謝されて、「あいつの話は分かりやすい」と評価されたり、多くの方が講演を聞いてくれたりするようになりました。

 

現在のCOVID-19で混乱している世の中で、これほど移動に制限がかかる状態を体験した人はほとんどいませんでした。なので、オンラインに関する知識や経験を持つ人が重宝されました。メタバースもまだ初期段階なので、少しかじるだけで先行者になれるわけですから、こんなチャンスは滅多にありません。

 

 

4.キャリアをアップデートする、「楽」なマインドセット

 

 

実際にVRやメタバースで先行している人々は、すごく面白いことをやっています。例えば2001年からVRに興味を持っていた知り合いは、2020年の3月、つまりコロナ禍に突き進む少し前に、アバターでリモート面談した人を顔も名前もわからないまま採用し、今でもアバターで仕事してもらっているそうです。しかも、この会社のコアにいるのは、超一流の会社を卒業した40〜50代の人達で、法務や経理もしっかりおさえたうえで経営しています。つまり、単なる「ノリ」で採用したわけではないということです。

 

何かの分野で先行者になったり、新しいキャリアを受け入れたりするのに、それを妨害するものなんて何もありません。唯一、マインドセットのアップデートだけがキャリアアップデートの機会になります。どうしてもテクノロジー業界ではスキルが必要だと思われますが、変化を受け止めるために必要なのはスキルでなく、意志を持つことです。

 

さらに、進む方向は好き嫌いや面白そうと思えるかどうかで決めてよく、そのときに重要なマインドセットは「楽」という字に集約されます。心理的安全が担保された職場では気が「楽」になりますし、それは仕事が「楽」しいことにもつながります。辛くて我慢している状態は長続きしませんが、楽しければモチベーションも上がります。ちなみに、顔を見せずに動きまわれて、音声やチャットでのコミュニケーションも使い分けられるメタバース空間の活用も、心理的安全性を担保する一つのアプローチです。

 

 

5.妄想から始めて、自分で未来を作り出す

 

 

ロシアの物理学者であるコンスタンチン・ツィオルコフスキーは少年時代、『海底二万マイル』などの作品で知られるジュール・ヴェルヌのSF小説に夢中になったそうです。耳が悪いというハンディを持ちながら、ヴェルヌの「月世界旅行」という作品で描かれた宇宙に憧れ、ついにはロケット工学の父とさえ呼ばれる研究者になりました。妄想力が少年の心を突き動かして、しまいには宇宙にまで飛ぶロケットの開発につながったわけですから、妄想には大きな価値があります。

 

Amazonはインターネット元年の少し前、1994年に一部屋のオフィスから始まりました。創業者のジェフ・ベゾスは、インターネットの世界では自分の思い描いた世界が実現できると思っていたのでしょう。Netflixは「DON’T GIVE UP YOUR DREAMS. WE STARTED WITH DVDS.」と書かれた看板を掲出しています。郵送でDVDを貸し出すサブスクリプション事業から始め、次第にシステムをインターネットに移行します。そして動画配信に力を入れるようになった結果、DVDレンタル時代の競合他社に圧倒的な差をつけました。

 

世界を動かそうと思ったら、まず自分自身を動かさなければいけないということです。会社員であれフリーランスであれ、大事なのは居場所に我慢しないこと。「私はこうありたい」と思って、ありたい自分でいられる、パワーを生み出せる場所や仕事を探すことは、人生を豊かにするうえでとても重要です。

 

経済学者のピーター・ドラッカーは「未来を予測する最良の方法は、未来を作ることだ」という言葉を残しています。誰かが何かを用意しなくても、自分たちで作れるのが今の世界の面白いところです。未来はまだ決まっていません。ぜひテクノロジーの力で、素敵な未来を作っていきましょう。

 

6.質疑応答

 

 

質問者A:グローバル企業の社内ITサポート部門でシニアマネージャーを務めています。今後もピープルマネジメントに進みたいが、テクニカルなバックグラウンドがありません。どのようなスキルを磨いたほうがよいか、アドバイスをいただけないでしょうか。

澤氏:スキルだけ身につけることは、ゴルフでいえばひたすら打ちっぱなしで練習を続けて、コースに出ないようなものです。マネジメントの仕事は相手ありきなので、社内外の募集に手を上げて、まずは目指しているポジションのマネージャーになってください。

グローバル企業レベルではディレクター層のサンプルが少なく、模倣できるテンプレートもありません。ましてやCOVID-19で過去の事例はすべて使いものにならなくなりました。ルールが大きく変わり、これまでのメソッドも陳腐化している可能性も大いにありますから、とにかく現地で学んで素早く応用することに全振りすることが重要です。

 

 

質問者B:金融会社に勤めており、デジタル領域での技術調査や支援に取り組んでいます。会社は古きよき日本企業という具合で、なんとなく将来に不安があり、ほかの事業会社でも生き残れる専門性が必要だと考えていますが、転職の方向性に悩んでいます。

澤氏:人生をよくするためには、時間の配分を変える・付き合う人を変える・暮らす場所を変える、の3つしかないという大前研一さんの言葉があります。

Web3の世界では、暮らす場所を簡単に変えられます。付き合う人を変えるという部分では、自分のコミュニティの外にいる人たちと、考え方や価値観のものさしを交換する場をどれだけ作れるかが大事です。

何によって自分のパワーが最も発揮できるか、自分の中で言語化できているでしょうか。それを定義するための壁打ちとして、ほかの人とコミュニケーションをとりましょう。個人で情報を発信したり、副業をしたりと、手段はなんでも構いません。相手のことをじっくり観察して困りごとを見つけ、それに対する答えを自分なりに編み出して共有すれば、相手にも喜ばれるし、自分の知識やスキルを整理する機会にもなるでしょう。

 

 

質問者C:日本のサブカルチャーが好きでゲーム業界に就職し、ローカライズや開発、運営に関わってきましたが、部署変更で契約や発注など事務周りの仕事を担当になりました。個人的にはeスポーツ業界やメタバースなどに興味があるが、年齢が50歳近いこともあり、自分の興味が向くままに仕事を探してよいものか迷っています。

澤氏:好きにやってみればよいのではないでしょうか。年齢は変えようのないファクトなので、考えても仕方がないものとして横に置きましょう。Cさんが年齢の要素以上に魅力的な人間であることが伝われば、相手も雇ってくれるでしょうし、JACリクルートメントのようなキャリアコンサルタントと相談して、年齢を条件に入れない会社を探す方法もあります。

条件面でマッチしない場面もあるでしょうが、それはCさんがダメなのではなく、もっと適した人がいるという判断がなされたのだと思います。逆に、ほかの人よりもCさんがマッチする会社もあるはずですから、あとはそこにリーチするだけです。人間は暇になると落ち込んでしまうので、弾かれてもすぐ次に行くぞと思えるスキームを作ることも大事です。

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