デジタルトランスフォーメーションがもたらす変革のポイント

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毎年新たなトレンド用語が頻出するデジタル市場において、最もトレンドを包括するワードであり、かつ最もビジネスとしての捉えどころが難しいワードが「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」ではないでしょうか。

AIやIoTをどう実業に活かすか?といったテーマは非常に身近なものですが、第4時産業革命といった漠然とした市場感を捉えるワードのようでもあるデジタルトランスフォーメーション。これを単に「企業がテクノロジーを駆使して事業の業績やあり方そのものを変革させる」ものと捉えてしまうケースも少なくありません。

ここで、トランスフォーメーションというワードが生まれた背景を今一度振り返った上で、デジタルトランスフォーメーションを改めて考えてみましょう。

デジタルトランスフォーメーションとは

デジタルトランスフォーメーションの初出は、Wikipediaによれば2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したとされています。今から15年ほど前のことです。

デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation; DX)とは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念(Wikipedia)

のことであり、

ビジネス用語としては定義・解釈が多義的ではあるものの、おおむね「企業がテクノロジーを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」

という意味合いで用いられます。

日本では、デジタルマーケティングがまだ限られた市場で急成長を見せる程度であった時期に生まれた「デジタルトランスフォーメーション」は、海外においても長年の間あまり注目を浴びることは無く、バズワードとなるのは2016年のことです。

その後、調査会社であるIDC Japan社やガートナー社等により「デジタルトランスフォーメーション」に対する様々な定義がされてきましたが、2018年12月、経済産業省によりDX推進ガイドラインが発表されました。

このガイドラインは、

「DXの実現やその基盤となるITシステムの構築を行っていく上で経営者が抑えるべき事項を明確にすること、取締役会や株主がDXの取組をチェックする上で活用できるものとすることを目的」(経済産業省HPより)

としています。

DXガイドラインの注目のポイント

こうした時代背景や各社の定義、ガイドラインを見てみると、デジタルトランスフォーメーションは既存ビジネスをいかにIT化する事で他社からの優位性を保持するか?もしくは既存ビジネスの資産から以下にデジタル化された新規事業を展開するか?というふうに捉えられるかもしれません。

しかし、本来のデジタルトランスフォーメーションの意義を経営者・事業責任者目線で見た場合、ガイドラインで注目すべきは、

《経営トップのコミットメント》
2.DX を推進するに当たっては、ビジネスや仕事の仕方、組織・人事の仕組み、企業文化・ 風土そのものの変革が不可欠となる中、経営トップ自らがこれらの変革に強いコミッ トメントを持って取り組んでいるか。(DX 推進ガイドライン(1)DX 推進のための経営のあり方、仕組みより)

という一文に表れています。最も上位の概念として、「企業文化そのものの変革」があり、それに沿った「組織・人事の仕組みの変革」に強いコミットメントを保つ必要があります。これを持たず、戦略なき技術起点の PoC は、疲弊と失敗のもと、とも記載されています。

残念ながらガイドラインの後半は、DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築の話となっています。

出典元 デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン(経済産業省)

その為、このガイドラインと併せて経済産業省がまとめた「DXレポート」を紐解くと、「経営面」「技術面」と併せて、「人材面」という軸があり、人材育成がいかに重要であるかが伺えます。

[参考] デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会の報告書『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』をとりまとめました

既存システムの運用保守といった技術者を、いかにサービス開発といった競争領域へとシフトさせられるか?が鍵となるようです。

人材面から考えるDX推進のポイント

とはいえ、IT人材不足が叫ばれる昨今、既存の人材を育成することにも限界があるだけでなく、前述の通り「企業のあり方・仕組みの変革」も余儀なくされている以上、新たな企業文化を構築する上での必要な人材の確保は重要なポイントとなってきます。同ガイドラインには人材面において「※ 人材の確保には、社外からの人材の獲得や社外との連携も含む」という記載もあります。今後は採用や育成だけでなく、様々なパートナー等のネットワーキングも重要となってくることは、ほぼ違いないでしょう。

デジタルトランスフォーメーションを単なる技術用語とせず、これからの市場に向けて必要な企業文化の変革と人材確保のあり方とできるか否か?が、管理者として最も重要な視点となりそうです。(JAC DIgital編集部)

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