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企業間物流を変革するHacobuーー巨大市場でDXを実現させたポイントとは

株式会社Hacobu

※このインタビューは2023年2月に実施しました。なお、所属・肩書は当時のものとなります。
佐々木 太郎氏

株式会社Hacobu代表取締役社長 佐々木 太郎 氏

国内だけでも20兆円を超える物流市場。その中でも私たちの暮らしや、あらゆる経済活動に欠かせないのが企業間物流だ。メーカーから卸売業者を経て小売業者に製品が届く過程の中には、元請けとなる大手物流企業をトップに、国内に6万社以上の中小運送会社が連なる。

あらゆる産業に欠かせないインフラである一方で、物流業界はデジタル化への対応が遅れていることが指摘されている。ドライバーの長時間労働を是正する法律改正に伴う「2024年問題」に加え、少子高齢化に伴う人手不足の顕在化で、業界は大きな転換期を迎えている。

こうした物流業界において、DXソリューションで急成長を遂げているスタートアップがHacobu(ハコブ)だ。同社は「運ぶを最適化する」をミッションに2015年に創業。物資の配送情報やトラックの動態管理・モニタリングを提供する「MOVO(ムーボ)」を開発・提供している。

物流業界で問題視されているトラックの低積載率や長時間の荷待ちなど、さまざまな課題の解決につながるとして、業界での注目度も高い。既にソニー、大和ハウス工業、日本郵政グループなど 大手企業との資本提携を結び、物流業界のDXを推し進めるキープレイヤーとして台頭している。成長著しい同社の戦略と創業の経緯について、代表取締役社長の佐々木太郎氏に伺った。

1. 力点を変えることで起きたイノベーション

―DXを浸透させるには難しいと感じる物流業界で、御社のMOVOはなぜここまで浸透したのでしょう?

物流業界にはメーカー、卸業者、小売という荷主が存在し、それらをつなぐ役割として元請けとなる物流企業と中小の運送会社が介在します。運送会社は日本全国に約6万社もあり、オペレーションがアナログです。ここにデジタル化をするアプローチを考えがちなのですが、そこには大きな落とし穴があります。

私たちも当初は運送会社に向けたサービス展開と営業活動を進めていましたが、社員が3人以下という小規模な会社が多く、不在にしていることも多いので営業活動もままならない状況でした。なんとかアポイントメントが取れても、「現状に困っていないし、上から言われない限り変えない」という反応が圧倒的多数だったのです。

佐々木太郎氏

Hacobu代表取締役社長CEO 佐々木太郎氏。アクセンチュア、博報堂コンサルティングを経て、米国留学。卒業後、ブーズアンドカンパニーのクリーブランドオフィス・東京オフィスで勤務後、ルイヴィトンジャパンの事業開発を経てグロッシーボックスジャパンを創業。ローンチ後9ヶ月で単月黒字化、初年度通年黒字化(その後アイスタイルが買収)。食のキュレーションEC&店舗「FRESCA(フレスカ)」を創業した後、B to B物流業界の現状を目の当たりにする出来事があり、物流業界の変革を志して株式会社Hacobuを創業。

このままではいけないと思っていた頃、資本業務提携先の大和ハウスが主催するセミナーに登壇する機会がありました。大和ハウスは自社で建てた物流施設を企業に貸し出す事業を展開していて、セミナーには国内大手のメーカーや小売企業の担当者が参加していました。

デジタルとデータの力で物流の課題を解消したいと訴えたところ、国内最大手の小売と、大手消費財メーカーの担当者から「講演の内容に非常に共感した」という反応を頂いたのです。それをきっかけに大企業とやりとりしていく過程で、物流業界を変えるにアプローチする先は6万社もある運送会社ではないことに気づきました。

業界の関係図や力点と作用点を俯瞰して見た結果、荷主企業や大手の物流企業と組むことが最も有効だったのです。単純な数だけ見れば運送会社のほうが多いのですが、デジタル化するための力点は運送会社ではなく、メーカー、流通事業者でした。 これによりMOVOの2022年累計利用数は、国内のトラックドライバーの半数を超えたのです。

―アプローチ先の変更以外に、何か技術的なブレイクスルーがあったのでしょうか。

イノベーション=劇的に優れた技術とイメージされるかもしれませんが、実際にはそういった事象は多くありません。むしろ技術の革新性ではなく、いかにして今あるテクノロジーを効果的に浸透させるかという発想が重要なのです。

そのためには、テクノロジーによって環境が変わっても大丈夫だと相手が理解するプロセスが欠かせません。私たちは現場の当事者である運送会社の声を聞き、彼らに即した対応を大切にしています。一方で現場に寄り添いすぎると、バランスを欠いた判断になりかねません。この領域で事業を成長させるためには最終的なユーザーである運送会社と、俯瞰して見た時の力点である大企業とのバランスが欠かせません。

2. FAXと電話が前提だった物流業界に、DXの可能性を見出す

―これまでに3社の起業に関わっていますが、Hacobu創業に至った経緯などをお聞かせください。

1社目のグロッシーボックスジャパンは、ロケットインターネットというドイツ企業が出資して、2011年に立ち上げた会社です。同社は海外で成功しているビジネスを他国で展開するビジネスモデルを得意とする企業で、グロッシーボックスジャパンは化粧品サンプルの詰め合わせをサブスクリプションで提供する事業を展開していました。ローンチの初年度から黒字化を達成しましたが、事業の方向性を巡って出資元と意見が食い違ったため、私から会社を去りました。

2社目のフレスカは自己資本で立ち上げた会社です。大手ECには出店しないハイエンドな食品のeコマースを手掛けていて、大手百貨店との提携や蔦屋書店の中に常設店舗を出すところまでこぎつけましたが、赤字続きで経営には苦労しました。

eコマースの赤字を埋める一環としてコンサルティングを行うようになります。大手食品メーカー子会社の経営改革プロジェクトに携わった際、企業間物流の世界に出会ったのがHacobuの創業につながります。
その当時のプロジェクトでは、トラック1台あたりの低積載率を改善し、輸送コストを抑えることが課題でした。実際に現場を調査すると手書きの配送依頼書をFAXでやりとりする文化が根強く、インターネットが全く浸透していないアナログな文化に衝撃を受けました。

また、トラックの現在位置も調べようとしても、位置情報も把握できず、運転中なので電話に出られないという状況が常態化していました。日本のビジネスインフラを支える重要な産業であるにもかかわらず、デジタル化が非常に遅れていることに勝機を見出した瞬間でした。

3. スタートアップで働く魅力は「突然の抜擢」

オフィスの様子

Hacobuのオフィス内。フリーアドレスを採用し、リモート+出社のハイブリット勤務など多様なワークスタイルに対応する

―佐々木さんはさまざまな企業でのキャリアをお持ちですが、スタートアップで働く魅力についてどうお考えでしょうか

スタートアップは成長スピードが早いので、大企業では考えられないような大抜擢が起きやすい特徴があります。特にミドルステージ以降のスタートアップになると、組織も急拡大しポジションも一気に増えるタイミングです。ある日突然、役職付きのオファーが出るということも珍しくありません。

抜擢するにあたって経営者側も普段の姿勢や成果を見た上でオファーします。ビジネスに対するコミットメントが高い人がおのずと活躍し、組織の中心となり全体のモメンタムを形成します。

―スタートアップとしては、ワークライフバランスも重視されていますね。

私自身4人の子供を育てる父親であり、仕事と育児を両立させる難しさを痛感してきた経験があります。少子高齢化が進む環境下で、さまざまな制約を受けながらも個々のパフォーマンスを最大限に引き出すような社会を作らないことには、日本経済の発展は期待できません。

制度としては、子育て・介護の時短勤務制度や育児・介護休業制度はもちろん、リモート+出社のハイブリッドを取り入れているので柔軟な働き方が可能です。他にも、「どへーじつ」というHacobuならではの制度も設けています。「どへーじつ」は、例えばお子さんが熱を出して看病したいが、稼働時間は確保したいという場合などに、平日を休日として土曜日に勤務することが可能な制度です。

ワークライフバランスに関する制度は、一律のルールを設定し紋切り型の運用にすると、その枠組に当てはまらない社員のケアができなくなります。個々の事情に合わせた弾力的な運用を前提としています。

4. 目指すは「物流業界のDX実現」SaaSはミッションを実現する手段でしかない

―HacobuではSaaSだけでなく、コンサルティングサービスも手がけられていますね。

私たちのミッションは「運ぶを最適化する」ことであり、SaaSはその手段として提供しています。大企業の多くはデジタルに投資したいという意欲は旺盛です。しかし、そのためには中期経営計画にDXに関するプランを盛り込む必要があり経営との合意が欠かせません。実際には大多数の企業担当者の経験やデジタルに対する知見が少ないため、DXが遅々として進まないケースが散見されます。そこで当社のコンサルタントが経営層とのコミュニケーションも含め、予算獲得に向けた戦略を描く段階からのサポートが欠かせないのです。

また、導入後も取得したデータの活用方法など、DXを実現するところまでサポートしています。私たちとしてはコンサルティングもSaaSも「物流業界のDX実現」というミッションのための1つの手段であり、物流インフラを革新するために必要なサービスを揃えているという考え方です。

―海外でもニーズの高いサービスだと思いますが、今後はどのように事業を拡張させていく予定でしょうか。

海外からの引き合いもありますが、単純な多言語対応だけでなく、裏側の仕組を含めたローカライズまで対応する必要があります。現在は海外進出のタイミングも検討しながら、国内事業の拡大に注力しています。 私たちの事業は時間をかけて取り組むものなので、10年先ではなく30年、50年先のビジョンを見据える必要があります。10年後の目標から見ても現状は未だ三合目にいるような状況です。見方を変えれば、これからさまざまな可能性が広がっていく段階ですから、物流業界を一緒に変革していく仲間を増やしていきたいですね。

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