「オムニチャネル」の実現を目指す消費財業界ではデジタルマーケティングの多様なプロが必要となる

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消費財業界を対象にデジタル領域専門で採用を支援する当社のコンサルタントが、消費財業界DXの推進状況と、それに伴うデジタル人材ニーズの変化、採用を成功させるためのノウハウを解説します。

解説者

木田裕太

食品・飲料・化粧品・日用品などの消費財メーカー・SPAなどを担当。Webマーケティング、Eコマース関連からDX案件まで、デジタルマーケターの採用を幅広くサポートする。

消費財業界を取り巻くDXのトレンド

消費財業界のDX動向を読み解くキーワードは、「オムニチャネル」です。消費者の購買行動が多様化する今、消費財メーカーは認知・流通経路の複線化で対応しようとしています。

消費財メーカーの従来のマーケティング手法は、主にマスマーケティングで広く網を投げるように認知を広げ、商品に関心を持った消費者が小売店へ行って購入するというものでした。

しかし、インターネットの普及とECの発達により、消費者がモノを買う場所や行動パターンが大きく様変わりしました。さらに、スマートフォンの普及やSNSユーザーの拡大で、消費者が商品を認知する経路も、モノを買うチャネルも多岐にわたるようになっています。

こうした変化に対応すべく、消費財メーカーと消費者を結ぶさまざまなチャネルを連携し、ユーザーが便利だと感じるエクスペリエンスを提供するのがオムニチャネルの考え方です。これにより消費者の満足度は上がり、売上やリピート率の向上が期待できるというわけです。

オムニチャネルのコンセプト自体は何年も前から小売業を中心に注目されていましたが、メーカー主導での取り組みに拍車がかかったのは直近の数年のことです。WebやSNSで情報を得て、インターネットを通じてモノを買う消費者が閾値を超え、消費財メーカー側もその必要性を強く認識するようになったのがその背景にあるのでしょう。

また、一部のグローバル規模の大手消費財メーカーに限っては、すでに生産・物流現場にもDXの流れが及んでいます。今後業界全体でオムニチャネル化が拡大し、売り上げ・利益に結びついていけば、次のステップとして、生産・物流領域のDXもまた業界全体に広がっていく可能性があります。

「オムニチャネル」実現を目指す消費財業界で求められるデジタル人材

消費財業界におけるデジタル人材の採用ニーズは、基本的にこのオムニチャネル化に応じて、主にデジタルマーケティングの領域で高まっている状況です。ここで求められる人材ニーズは大きく2種類あります。

1つは、オムニチャネルを前提としたマーケティング戦略を描き、全体像を設計・企画できるマネジメントクラスのニーズ。消費財メーカーは、多様なチャネルを含めた向けたコミュニケーションモデルをゼロから構築しなければなりませんが、現状では社内にそれができる人材がいません。そこで、外部からデジタルに強いマネジメントを採用しようという動きです。

もう1つは、描かれた戦略のもと、マーケティング施策を実行していく実働部隊としてのプロフェッショナルのニーズです。細分化された役割ごとに、例えば広告運用、コンテンツマーケティング、CRM、SNSマーケティングなどさまざまなニーズがあります。そして現状では、いずれのポジションのニーズも高い状況です。今後各社でDXが進み、結果が出てくると、よりニーズは高まり、役割の細分化も加速すると考えられます。

消費財メーカーは従来、流通・小売、あるいはECプラットフォームへの営業活動を通じて売る方法がメインだったため、自社に消費者の詳細な購買データを持っていないケースがほとんどです。そこで、自社データを集めるためにオウンドECサイトを立ち上げたり、独自のDMP(データマネジメントプラットフォーム)を構築したりする流れも起きています。

それに伴い、CRMやデータ分析のためのマーケティングオートメーション(MA)ツールやビジネスインテリジェンス(BI)ツールを導入するシステム寄りの求人ニーズが生まれつつあります。消費者との直接的なコミュニケーションを前提とした情報インフラ構築のプロフェッショナルを採用した上で、社内に既存の情報システム部、外部ベンダーと協力してプラットフォームの開発・ツール導入を進めるやり方が主流です。

DXが進んでいる消費財メーカーにおけるマーケティング組織の全体像

ここまで、デジタルマーケティングという大きな括りで話してきましたが、企業の中では、商品の認知拡大やファン獲得などの「プロダクトブランディング」の機能と、直接的に消費者に「売る」機能で組織が分かれているケースが多く見られます。

「プロダクトブランディング」を担う組織は、さらにブランド戦略のプランナー、SNSアカウント運用、コンテンツマーケティングなどに細分化されます。

一方、「売る」機能を担う組織の仕事は、基本的には自社のECサイトの運営が主軸となります。大枠としては、ECでの販売に関する全体の戦略を担うプランナーのもとに、「ECサイトをつくる」「ECサイトに顧客を連れて来る」「連れてきた後、顧客との関係を維持する」といった機能ごとのチームが存在します。

「ECサイトをつくる」組織にはWebサイトやスマートフォンアプリの開発担当者、コンテンツやLPなどのクリエイティブを担う人がいて、「ECサイトに顧客を連れて来る」チームにはリスティング広告などの運用型広告を担当する人や、SEO担当者などが配置されます。「連れてきた後、顧客との関係を維持する」のはいわゆるCRMのチームです。

これらの中で、現状ではCRM、ファンマーケティング経験者が採用市場に少ないため、競争が激しくなっています。

また、広告運用ができるマーケターも、代理店で働く人も含めれば一定数は市場にいるものの、それ以上に引き合いが強く、やはり採用の難易度が高いポジションの1つです。加えて「肌につける、口に含む」等の商品の特徴から、出身業界や経験から候補者となりうる対象が狭まる傾向があることも、人材獲得競争を激化させている大きな要因です。とはいえ代理店から採用するケースも多く、特に化粧品メーカーではその動きが顕著で、コスト効率を上げるための内製化の流れは、今後も続くでしょう。

デジタル人材採用にあたっての課題と打ち手

 

消費財メーカーがデジタル人材を採用する上では、ともすると採用活動のノウハウ以上に、組織のあり方が採用の成否を左右する様子が見て取れます。

オムニチャネルの本来のコンセプトは、従来型のオフラインマーケティング、デジタルマーケティングをも含めて連携・統括し、それぞれの顧客に合った購買機会を提供することで全体の売り上げの最大化を図るもののはずです。

ただ、デジタルマーケティングが後発であるためか、本来は連携すべき既存のオフラインマーケティング組織との間で、ある種の“競合”関係ができてしまうきらいがあります。それによって組織横断的な協力が進まず、オムニチャネルの実装がなかなか進まないというケースもあるようです。

新たにデジタル人材を迎え入れようとした時に組織がそのような状態では、求職者が入社後の活躍をイメージできず、選考途中で離脱してしまうといったことも起きかねません。

そうした事態を避けるためにも、デジタルに対するリテラシーを持ち、会社の戦略におけるDXの重要性を十分に認識したマネジメントをデジタルマーケティング部門のトップに置くことが望ましいです。適切な意思決定をし、責任を持って施策を推進できるポジションにいることがまず重要になります。

企業によっては大きな組織改革が必要となり、それは容易ではないかもしれません。ただ、逆の見方をすれば、会社としてDXを推進していくことに「経営層がコミットしていること」を分かりやすく示し、それが実践できるガバナンスを構築できさえすれば、それ自体が求職者を惹きつける要因にもなりえます。

もう1つの課題は、求職者が他業界の採用競合企業と比較した時に、自社を魅力的に見せる必要があるということです。

デジタル人材を採用する上では、消費財業界だけでなく他業界、例えば巨大IT企業や、Web系の広告代理店なども採用競合となります。そのような企業は、フレックスタイム制やリモートワークなど、働き方に関して社員に裁量を与えていることが多いです。求職者が入社先を選ぶ際に、そうした部分で見劣りしないよう、社内制度を整えておくことが重要です。

また、特にマーケティング領域のデジタル人材は、転職時点の諸条件だけでなく、将来的にどのようなキャリアを描けるかを非常に重視して転職活動をしています。そこに対して、人事あるいは現場から、入社後のキャリアパスの可能性を明確に伝えることが、採用を成功させる鍵になるでしょう。

越智 岳人

インタビューアー:越智 岳人

編集者・ジャーナリスト
現在はフリーランスとして技術・ビジネス系メディアで取材活動を続けるほか、ハードウェア・スタートアップを支援する事業者向けのマーケティング・コンサルティングや、企業・地方自治体などの新規事業開発やオープン・イノベーション支援に携わっている。

畑邊 康浩

ライター:畑邊 康浩

編集者・ライター
語学系出版社で就職・転職ガイドブックの編集、社内SEを経験。その後人材サービス会社で転職情報サイトの編集に従事。
2016年1月からフリー。HR・人材採用、IT関連の媒体での仕事が中心。

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