海外のDX人材が日本を選ばない5つの理由

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海外進出企業を対象に外国人採用を支援する当社のアドバイザリーが、海外のDX人材採用を成功させるためのノウハウを解説します。

解説者

野田 作郎

2012年4月入社。ヘルスケア(医療機器)業界を担当するコンサルタントとして勤務した後、2016年1月より現職。「アジア人材戦略レポート」の主筆として、企画・調査設計、取材、執筆に携わる。

DX人材は世界的に不足しており、日本の企業もその例外ではありません。DX人材を確保する為には日本にいる日本人だけを採用ターゲットとしていては質・量ともに足りないことから、海外のDX人材採用に動く企業も年々増加しています。

しかしながら、そうした優秀な海外のDX人材の採用がスムーズに進むケースは極めて稀です。海外のDX人材採用を阻む大きな問題としては、彼ら/彼女らが日本で働くことや日本の企業で働くことについてネガティブであるということが挙げられます。

本記事では、彼ら/彼女らが日本や日系企業で働くことについてどのような懸念を持っているのか、2019年に当社が行った200余名へのアンケート調査※1結果をまとめた人材戦略レポート2020より一部抜粋してご紹介します。

海外のDX人材の価値観を把握しておくことが、採用を成功させるためだけでなく採用後のマネジメントにおいても重要であることは言うまでもありません。彼らがどういった環境を望み、どういった組織を嫌うのか、御社の人材活用のヒントにして頂ければと思います。

※1:大学でAIやディープラーニングなど、先端技術を学んだ外国人材211名に対するアンケート調査

海外のDX人材が懸念していること① 言葉の壁

言葉の壁は、それがなかったからと言って大きくプラスになる要素というよりは、あると困るという衛生要因的な側面が強いといえます。

大学で日本語を学んでいたようなもともと日本への興味関心が強い人材を除いて、殆どの海外のDX人材は日本語が出来ません。海外のDX人材を採用したい企業は数多くありますが、そうした企業の大半は、求人票を日本語で作っており、実質外国人材に対しても日本語力を求めているのが現状です。

日本で勤務経験のある人材によると、「日本人ともっと交流したかったが、日本人は英語が出来る人が少なかったため、中国人や韓国人など、他の外国人とのコミュニケーションが中心であった」など、社内コミュニケーションに支障が出るケースがみられます。

2018年に当社が行った調査で、日系企業の海外拠点において「駐在員とナショナルスタッフとが通訳を介してコミュニケーションをとっている企業」と「通訳なしでコミュニケーションをとっている企業」とで業績目標の達成割合を比較したところ、通訳を介さない(=駐在員とナショナルスタッフとが直接コミュニケーションをとっている)企業の方が、業績の達成割合が高いという結果が出ています。

社内コミュニケーションを支障なくとれる状況でなければ、単に「コミュニケーションが取れなくて不満」というだけにとどまらず、理念や戦略、業務の指示を従業員に明確に理解させることが出来ず、また、従業員からの要望を適切に吸い上げることも出来ないことから、中長期的には業績の悪化につながっていく要因となりかねません。

日本語なのか、英語なのかはともかくとして、いかに共通の言語でコミュニケーションをとれる体制をとれるかは、海外のDX人材採用を進める上で重要なポイントとなりそうです。

海外のDX人材が懸念していること② 労働時間の長さ

「日本に行くと働きすぎて死ぬのではと親が心配している」など、過労死や長時間労働は日本全体に蔓延する問題として認知されており、日本での就業を敬遠する理由の一つとなっています。

また、実際に日本で働いた経験のある人材によると、「有休を申請したら上司に怒られて会社に行くのが嫌になった」というケースなどもあり、過労死まで行かなくとも、ワークライフバランス全般に関する彼らの常識と日系企業の常識が異なるのだと認識しておかなければ、折角採用出来たとしても早期離職は避けられません。

働き方改革の必要性が叫ばれるようになり、企業ごとに様々な取り組みがなされているとはいえ、海外から見るとまだまだ道半ばといったところなのでしょうか。日本や日系企業が選ばれるようになるためにはより一層の努力が求められます。

一方、外国人材を採用した企業の中には、「外国人材が定時で帰ることで、周囲の日本人社員も早く帰ろうという意識が強まった」という事例もあり、ワークライフバランスへの意識が強い外国人材を入れることが働き方改革につながるとの見方もあります。

海外のDX人材が懸念していること③ 昇進昇格の遅さ

日系の伝統的なメーカーでは40代で課長、50代で部長になる、というのが一般的な昇進スピードですが、世界に目を向けてみると、Googleのサンダー・ピチャイ氏は43歳の時、Microsoftのサティア・ナデラ氏は47歳の時にそれぞれCEOになっているのです。ベンチャー企業ならまだしも、従業員数10万名という巨大な組織において40代の人材を組織のトップに引き上げるというのは、年功序列の根付いた日本ではあまり考えられないことです。

また、ガラスの天井を懸念する声もありました。人事制度上には明記されていないものの、外国人材などが一定の役職を超えて昇進することが出来ないような“見えない壁”があることをガラスの天井と呼びます。

どちらかというと日系企業の海外拠点で問題視されることが多い「ガラスの天井」ですが、これは日本国内でも外国人材の離職を加速させる原因となっています。

実際、当社に転職相談に来られる外国人材の経歴を見ても、日系企業に採用された外国人材が管理職にまで昇進されているケースは極めて稀です。

また、少ないながらも管理職になっている人材はいるものの、その多くはピープルマネジメントを伴わないマネージャー職(いわゆる担当課長)に限定されているのが現状です。こうした昇進や昇格に関する不透明性は、海外のDX人材が日系企業を敬遠する要因となっています。

海外のDX人材が懸念していること④ ダイバーシティの欠如/受容性の低さ

日本でも企業のホームページを見てみると、「ダイバーシティ&インクルージョン」を大きく打ち出しているのを目にする機会が増えてきました。

しかし、「女性であることで給与を低く抑え、昇進する機会を平等に得られないのではないか?」、「外国人であることで差別されるのではないか?」といった懸念のコメントが複数寄せられるなど、海外のDX人材の立場から見るとまだまだ日本は多様性に対して保守的に映っているようです。

海外のDX人材が懸念していること⑤ 企業文化 

日本で働くことへの懸念として「Culture」を挙げる人も多数いました。ここでいう「Culture」とは具体的には、「トップダウン」「上司が帰るまで帰れない」「恒常的に残業がある」「意思決定が遅い」といったことを指しています。

また、ネガティブに捉えている文化の一つに“飲みニケーション”をはじめとした仕事外での付き合いの多さを挙げた方もいました。伝統的な日系企業のホームページの採用欄を見ると、社員旅行の様子などが盛んに掲載されているケースを見かけますが、そうした社外の付き合いをアピールすることについては、海外のDX人材には敬遠される要素になっている可能性があります。

一方、ここで気をつけたいのが、海外のDX人材はあくまでも「社外の」付き合いにネガティブなのであって、業務においてチームワークを軽んじているわけではないという点です。

調査の中では、就業先に希望することとして「優秀な人と一緒に働くこと」「個人主義の集まりではなくチームワークを大事にする環境で働くこと」を重視するとの回答がいくつも寄せられました。

「チームワークを高める為に社外での付き合いを大事にする」という伝統も大事かもしれませんが、「チームワークは大事にするが、仕事とプライベートをしっかり分けたい」という価値観にもきちんと寄り添う努力が求められます。

過去の調査において、買収した海外企業の外国人材を本社の執行役員に任命した企業もありましたが、「日系の根回し文化に嫌気が差してすぐに退職した」など、日系企業における文化の独自性がダイバーシティの推進を阻んでいる要因となってしまう場合があります。

さて、今回は海外のDX人材が懸念していることを5つご紹介しましたが、当然懸念は5つだけではありません。不透明なジョブディスクリプションや低い給与水準、ヒエラルキーなど、他にもまだまだあります。海外のDX人材を確保・活用するにあたり、全てを今すぐに変えることは難しくとも、必要な人材に選ばれるために一つずつでも変えていく努力が求められます。

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